第45話 最後の一言が君らしくて

「すげーいいヤツじゃん」
「なんで?」
「・・・」
「え!?そんなことしたの?」

よくよく考えると・・・
大したことではなかったかもしれない。
しかし、外と内で見せる顔が違うのは
やっぱり良くないと・・・僕は思うんだ。

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

「ね!ね!今週末遊園地に行こうよ!」
「え・・・と、今週はちょっと、」
「じゃ、来週行こう!」
「は、はい・・・」

彼女曰く、「誘い方が上手かった」らしい。
「今度行こう」ではなく
具体的な日を上げたのが良かったそうだ。

当たり前だよね。
今度とオバケは見たことがない。

・・・
心霊写真と怪現象は見たことあるけど。

彼女はTちゃん。
友人がセットした合コンで出逢ったんだ。
そして、二週間後、
ディズニーランドへ行った。

楽しいひとときを過ごし
辺りも暗くなった。
パーキングのライトを頼りに愛車を探す。

「えぇ〜っと、この辺りの・・・
 あったあった!」

ディズニーのパーキングはめちゃくちゃ広い。
ちゃんと覚えておかないと
発見不可能になってしまう。

車に乗り込んで・・・
ちょっとの沈黙。
助手席の彼女を抱き寄せる。

「ちょっと!こぉら!」

構わない。

「もう!・・・」

抱きしめたまま
うつむく彼女の頭にキス。

キスキスキス。
キスの雨。

抱きしめてる彼女が熱くなってきた。

女の子って・・・
多分男もそうなんだろうけど、
感じると一気に体が火照ってくるじゃない?

それがわかった。

ふと・・・
彼女が顔を上げた。

初めてのキスは・・・
ディズニーランドのパーキングに止めた
車の中だった。

後で彼女に聞いたんだよね。

「ねぇねぇ!?
 どうしてあの時、顔を上げたの?」
「もうっ!そういうこと聞く?」
「ジョーシキでしょ♪」
「・・・。
 キスしたくなったからよ」
「したくなった!?」
「違うでしょ!
 ・・・。
 キスが上手だったのかもね」
「あははははは。ありがと」

こういうのは・・・
純粋に嬉しいよね。

それから楽しい日々を過ごすが・・・
3ヵ月後、ある事件がおきた。

何度も登場するお馴染みの I と Y。
そして同じく中学来の友人F(♀)とその彼氏。

ああ、話したい・・・。
話してしまおう!

彼の名前はシモイチさんという。
名前を初めて聞いた僕と I は

「でかそうっ!!」

・・・とハモッた。
それだけなんですけど。
実名を出してごめんなさい。

彼ら4人と僕達2人。
6人で逢おうじゃないかという話になったんだ。
Fは大阪で働いており
たまたま東京へくる機会があったみたい。

そうだ、書きながら思い出した。
僕が参加することは秘密だったんだ。

I と Y、F達の4人にしておいて
僕が「やぁ、久しぶりだな」と
白々しく登場することにしてたんだ。

場所は表参道の富士銀行前。
そういえば・・・
この日も雨だったぞ!?
Fとは数年ぶりに会う日だったのに・・・。
あぁ、やっぱり僕はスーパー雨男。

地下鉄出口辺りをコソコソする僕。

「おっせーなー」
「まじ、おっせーよな」

プルルルル・・・

「Fじゃねーか?」
「もしもし?
 ・・・
 なんだ、お前どこにいんの?
 ・・・
 はぁ!?誰がいたって?
 マーチン!?いるわけないじゃん」
「うははははははは!」
「バカな事言ってないで早く来いよ!」

プッ!

「見つかってたのか」
「みたいだな」
「でも、なんで逃げるんだ?
 もしかして俺嫌われてる?」
「どはははは!昔の過ちが・・・」

過ち!
そんなこともあったなぁ。

中学の悪ガキだった頃に
女の子の胸をタッチする「胸タッチ」が
密かに(!?)流行っていた。

流行らせたのは・・・
僕という噂もあるがそれはいい。

で、その時に・・・ね。
それが中学1年の時。

そして、中学3年の時、
Fは強烈に I に惚れて告白をした。
僕はその時、両方と仲良しだったので
二人の間を取り持った。

・・・。
この頃からマーチン先生してたんじゃんか!

結局、付き合いはしなかったけど
みんなこうして
大人になっても会える仲になったんだ。

「きゃぁぁぁあああっ!!
 やっぱりいるんじゃないのぉー!」
「なんだよ、それ!?
 久しぶりに会うと言うのに!」
「おっははははは!!」

こうしてみんなでご対面。

一応言っておきますが・・・
僕とFさん、仲良しですからね!

みんなで仲良くお食事を。
僕と I はというと・・・
シモイチさんの股間が気になって仕方がない☆

わけないでしょ!

その後、カラオケに行こうと
タクシーを2台つかまえ3:3で乗ることに。
僕と彼女が別れて乗った。

そして・・・
到着した後に I が僕へ話かけてきた。

「すげーいいヤツじゃん」
「なんで?」
「お前の彼女がさ
 さくっと金出してくれてさ。
 俺が払うって言うのにいいって。
 ああいう女は珍しいぜ」
「え!?そんなことしたの?」

少し前に・・・
僕と彼女の間でこんなことがあった。

毎年同じ事を繰り返すが・・・
冬にスキーで遊びすぎた僕は
3月時点で借金が50万くらいあった。

その返済をすべく
この頃は貧乏だった。
彼女にもお金がないことを伝え
基本的に割り勘をお願いしていた。

僕の家に彼女が遊びに来た時に
些細な事でケンカになったんだ。
その時の事。

・・・
「大体ね、割り勘も納得いかないのよ!」
「はぁ!?」
「マーチンの方が多く食べるし
 残った食べ物とか、シャンプーとか
 全部マーチンの家にあるわけでしょ。
 なのになんで半分私が払うわけ!?」
「・・・」

閉口した。
言葉が見つからなかった。
あぁ、君はそういう思考回路なのねと
ただ、思っただけだった。

言えばキリがない。
じゃあ、君がいる間の家賃は?
ガス代は?水道代は?電気代は?
・・・

そして、タクシーの件。

この外面(そとづら)は何?
全てにおいて同じ態度なら別にいいが
これは180度回転している。

「マジで・・・?」と I 。

楽しいみんなの集まりだったが
僕と I はブルーになった。

それから数日後。
またも些細なケンカをした。
ぶッちぎれて彼女を送る事になり
その車の中で彼女にタクシーの話をした。

彼女は黙っていた・・・。
そして最後に少しだけ言葉を交わし
彼女は車を飛び出した。

「売り言葉に買い言葉」を交わした気がする。
興奮していたせいか・・・
交わした言葉は覚えていない。

それが彼女を見た最後だった。

それから8ヵ月後の12月12日。
携帯の留守電にメッセージが入っていた。

「Tです。
 お誕生日おめでとう。
 ふと思い出したので電話しました。
 ・・・それだけなので、
 電話はしてくれなくっていいです」

「電話はしてくれなくっていいです」という
最後の一言が君らしくてさ。
とても・・・
とても、懐かしかったんだよ。

P.S.電話しなくてごめん。


Form Martin


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