第45話 その時はやって来た

「なかなか当たらないよねェ」
「そうなんですよね〜」

僕は珍しくパチンコ屋さんにいた。
もともとギャンブルは大好きなんだ。
だけど、、、
「ギャンブルは身を滅ぼす」と
大学時代に痛感して足を洗った。

大学3年の時に
朝からパチンコに行って
ひたすら負け続けて5万5千円。
学生の僕の身は充分に滅んだ。

今日は本当に気まぐれな
パチンコデー。
年に1、2回行くんだよね。

結構空いている僕の列・・・
何故か隣に若い女の子が座った。

こういうのって・・・
やっぱり気になるよね。

さて、777みたいに
みっつ揃えば大当たり。

77・・・
「り〜ちっ!!」と効果音。
彼女がこっちを
じーーーっっ。

・・・8
「はぁ〜」と彼女。

ハズレたのは僕ですけど・・・。

明らかに
「話しかけてよ、お兄さん」サインだ。
パチンコ屋で声かける・・・?
関係ないか。

☆☆・・・
「り〜ちっ!!」
じーーーっっ。

・・・◇
「なかなか当たらないよねェ」
「そうなんですよね〜」

と言いつつ
まだ見ぬ彼女の顔を見る。
・・・!
可愛いじゃない!

「よく来るの?」
「はい〜。
 近くなんですよ〜」
「へぇ〜、あのさ・・・」

り〜ちっ!!

くそ、バカパチンコめ!
邪魔するな〜!
でも当たれ〜!!

!!!!(~o~)

ちゃんとハズレ。

「ダメだね〜」
「はい〜」
「あのさぁー!」
と言いながら彼女の耳元へ接近!
耳元5cm!

・・・あら、いい匂い☆
女の子の匂いってだぁ〜い好き!

パチンコ屋さんはうるさいから
超接近しないと話しにならないんだ。

「あのさぁー!」←叫んでいる
「はい!?」
「やめて、ご飯食べにいかない?」
出た、マーチン!行動が早い!

「はい!喜んで!!」
おろろ!?即決じゃん。
これ、絶対待ってたよね・・・。

「今日一人なのぉ?」
また接近して問いかける。
何故こんなこと聞くのかって?
確かさっき、男がいたんだよ。

「いいえー。友達と来たんですー」

友達ねぇ・・・
友達とやらを連れて行く気は無いぞ。

「大丈夫なのぉ!?」
「へーきですー!」

そこへやってきた若い男。
何か話ているけども聞こえない。
・・・
どう見ても付き合ってるぞ?この二人は・・・。

無視してパチる僕。
全然集中していないから出るはずも無い。
・・・勿論、集中したって出るものじゃないんだが。

男が去る。

「彼氏ぃー!?」
・・・と聞くところがまた僕らしい。
「いいえー。前、付き合ってたんですぅー!」
へー、まぁいいや。

「じゃ、行こっかー?」
「はいぃー!」

収支+18000円
実は何気に勝ちました。

このパチンコ屋さん近辺は余り詳しくないが
かろうじて調べてあった洒落た店へ。

ウェイターがカクテルを持ってくる。

「ありがとう!」
と彼女。

「へぇ、偉いね〜。
 なかなか言えることじゃないよ」

そう、僕も頭は下げるが
口に出しては言わない人だ。
うん、でもこれはマネすべきだな。

「いいね〜。
 僕も今度からやろっと」
「あははは、ありがと」

これをきっかけに
いい雰囲気で恋愛話や
得意の心理テストに花を咲かす。

心理テスト、ひとつやってみるかい?
お勧めのヤツ。

「あなたは海を眺めていました。
 遠くに船が一隻見えます。
 ・・・その船が、汽笛をならしました。
 ボォーーッ・・・・というあれ。
 さて、汽笛の長さはどれくらい?」

実際に口に出していってごらん。

・・・さて、どうだった?
それが、君のキスの長さなんだよ。
ちなみに僕は30秒で
彼女は1分だった。

「えぇー、私は1分なのお〜」
「あはははははは!!!!
 すっげー、僕より長い!」
「・・・試してみる?」
「・・・そうだね」

強烈なサイン。
完璧じゃん!

「じゃ、カラオケに行きますか!」
「うん!」

席を立ち車へ。
乗ったらすぐに彼女が抱きついてきた。

汽笛より長いキス。

・・・これは、
今更カラオケに行っても仕方が無いなぁ。

「あのさ、、、
 二人っきりになれるカラオケに行こうよ」
「・・・
 リバーサイドヒルとか?」
「ふふ、そうだね」

強い。
この子は僕より上かもしれない。
でも、彼女は二十歳だった。

市街地から車で20分ぐらい。
その名の通り辺りには・・・
川と山と田んぼしかない。

さすがリバーサイドヒル。

日本全国に100軒はありそうな名前だ。
君がもしもリバーサイドヒルに行ったなら
そこは僕が行った所かもしれないよ☆

車中での会話。
「ねぇ、マーチンって
 口でされたら、声とか出しちゃう人?」

きえぇぇーーー!
そんな事いきなり聞くかぁ?普通!?
やっぱり僕より強い。
・・・と0.5秒で考えて

「ああ、もう
 きゃーきゃー声出すよ」
とお返ししました。

リバーサイドヒルに着いて
部屋に入るなりすぐいい雰囲気。

舐めて欲しいけれど
舐められてはいかんと思い
持てる全てで頑張った。
その甲斐あってか
彼女もいってくれました。

そして暫しの休憩の後・・・
事件が起きた。

彼女を抱きしめようとした時に
「触らないでよ!」
が飛び出したんだ。

???
何?
冗談かと思ってもう一回・・・

「触らないでッたら!」

エッチの後に
触られるのを嫌う人は確かにいる。
でも、初エッチでこれはないと思うが・・・。

ブルーになり、少し間を置く。

「どうしたの?」と声をかけ
肩をトントンと叩いたがまた振り払われた。

ふざけんなよ、こいつ・・・

僕はここで完璧に切れた。

仮に、
さっきの彼女の態度は全部演技で
死ぬほど僕のエッチが下手だったとしても
この態度は許せない。

もしも肌が合わないと思ったなら
もう会わなければいいことなんだ。
二人裸、ベッドの上でする事ではない。

許さん!

どうしたらいいだろう?と
真剣に考えた。

きっとこのまま時間だけ過ぎても
死ぬほど雰囲気悪い状態で
僕が送るだけなんだ。

・・・ん?
この感覚は記憶にあるぞ!?

ふと蘇る苦い記憶。
そう、青春記第34話。
君は覚えているだろうか?

もうダサい僕にはなってはならない!
その時はやってきたのだ!!

ちょうどこの時、
彼女がソファーに移動して
嫌味っぽくタバコをふかし
そしてシャワーを浴び始めたんだ。

今だ!!!!!

ベッドから飛び降り
超スピードで服を着てズボンを穿く。
もたもたして彼女がシャワーから出てきて

「なぁにやってんのよー」

と言われたらカッコ悪すぎる。
ダサい僕になってはならない。

着替えが終わり
部屋を出ようとドアノブを・・・

回らない!

げげ、ここはオートロックなんだ!

よりによって
こんな時にこんな所とは!
迷わずフロントに電話する。

番号は?わからん!
多分9番だろう!

『9』 ピッ!
「ジコクヲ セッテイシテ クダサイ」

モーニングコールじゃねーかよー!!

『7』 ピッ!
「はい、フロントです」

げ、もう出た!

「あ、はい、えぇっと、あのぉ〜」
「?」

いきなりだったので
喋る言葉を考えていなかったんだ。

「あ、あの出たいんですけど」
「はぁ?」
「あ、その、
 こっこっコンビニへ買い物に行きたいのです」
「・・・少々お待ちください」

やばい、怪しまれているぞ!?
だって怪しいもんなぁ・・・

「はい、お電話変わりました」

責任者のようだ。

「すみません、コンビニへ買い物に行きたいので
 ドアを開けてください。一人は残りますから」
「預かり金を頂きますが?」
「結構です」
「かしこまりました」

心構えが出来ていればこんなものさ。
”カシャン” と遠くで音が聞こえた。

よし!急ぐぞ!

心臓をバクバクさせながら
フロントで1万円を渡し
車へ乗り込んだ。

・・・やった!

僕を怒らせた君が悪い。
ホテル代を出しただけ有難いと思ってくれ。
・・・と独り言を言いながら車を走らせる。

さすがに罪悪感もある。
でも・・・許せなかった。

思いのほか遅く
それから15分くらいして携帯がなった。

「J 030********」

延々と鳴っていた。
しかし、それも2回で鳴らなくなった。
さすがに、、、強い子だ。

伝言の時、僕はこう言っていたよね。
「いいんだよ、こんなのお互い様さ。
 子供じゃないんだから一人で帰るさ。
 山奥に捨てるんじゃないんだから」

リバーサイドヒル、それは・・・
限りなく山奥に近いところでした。

一体どうして、こんなことになったのか。
「ありがとう」を教えてくれた君からは
とても信じられなかったんだよ。


Form Martin


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