第44話 東京ラブストーリー 〜後編〜

「さっきからキスばっかり」
「ホント」
・・・

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

三日前。

前回苦汁を舐めた晴海へ行った。
そう、「ひとりっきりのフライデーナイト」。
あれだ。
そして馬鹿にされた2Fの展望台から
「お前が好きだー!!」と叫んだ。

うわーー!よくやるよね!!
今思うとこれはやっぱり凄い!
じゃなくて・・・
恥ずかしいね☆

彼女が喜んだかって?
勿論!
「もう、バッカじゃないの!?」
と強烈に怒られました。

でもそれから10分後、
1秒間だけ初めてのキス。
やっぱり喜んでくれたのかな・・・?

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

夜景が大好きな僕は
光る滑走路が目の前に見える
ここに来た。
そしてただ、ただ彼女と抱き合い
長いキスをしていた。

「さっきから、キスばっかり」
「ホント」
「・・・」

京浜島海浜公園。
昔はそんな名前だった。
羽田空港が目の前に見える
ちっさな港公園。
そこは僕のお気に入りだ。

横浜では彼女の心を掴めなかった。
3日前は1秒しか掴めなかった。
しかし、今は・・・。
今は確かにここにある。
それがとても嬉しかった。

車を部屋に向けて出発。
「どこ行くの〜」
「埼玉」
「えぇ〜!?だめよ」
「行くの!」
「もぅ〜。。。」

埼玉は僕の家だ。
海浜公園からは正直かなり遠い。
車で2時間というところか。
途中で環状八号線の渋滞にハマる。

「やっぱ、渋滞してるよ。
 ごめんね」
「・・・。」

あれ??
「・・・」

寝てるよ。。。
「・・・」

「こらっ!」
「☆!あ、うん、んぁあ何?」
「寝たらホテルに連れてくぞ!」
「しないもーん」

「しないもーん」って何だよ?
1.マーチンはそんなこと
 「しないもーん」
2.ホテルにいってもHなんか
 「しないもーん」

全く男をナメてるなぁ。
僕は有言実行派だと知って・・・
・・・また寝てるよ。

僕は女の子が寝そうになると
必ずこういうけれど・・・。
みんな寝ちゃうんだよね。
なんでだろう??

実は「早くホテルに連れて行け!」
・・・と言っているのだろうか?
ま、いっか。

部屋に着いてTVをつける。
いきなり登場したのはキムタクだ。
「きゃ〜!私のキムタク!
 超カッコイイ〜!
 キムタクなら何されてもいいわ!!」

第一声がそれ。
なんだよ、なんかムカつくなぁ。
キムタクと勝負では
いくら僕でも分が悪いぞ。
さっきの甘い雰囲気がぶち壊しだ。

しかし!
そんなことでめげるマーチンではない。
迫る迫る迫る!!

でも、、、
駄目!!が出て
エッチなことはしたけども
エッチはしないという不完全燃焼におわりました。

恐るべしキムタク(~o~)!!

それからも二人はよく逢った。
デートを重ねる二人だけど
キスしたりしなかったり。
彼女の心が
あっちいったりこっちいったり。
それが僕にはよくわかった。

「変わりやすいのは女心と秋の空」
この言葉を身をもって
教えてくれたのは彼女だった。

ある日。
新宿へ夜のドライブへ出かけた。
そして都庁下の広場を
散歩しながら話していた。

彼女を抱きしめようとしたその時に
彼女が身をよけたんだ。
するっと逃げた。

これで僕はキレた。
今まで散々振り回されたあげくのことだったからだ。

「帰ろ」
「えっ・・・?」
「ほら、帰るよ」
「・・・。」

練馬の彼女の家まで約30分。
長い沈黙ドライブだった。

・・・これで終わりにしよう。

そう思っていた。
正直言って、僕は自分がかわいい。
振り回されるのは懲りているんだ。
中学の時に・・・。

彼女のマンションに到着。
車から降りた彼女に一言だけ
「じゃね」
といって間髪いれずに
車を発進させた。

100%終わらせるつもりだった。

それからの仕事場では
僕は殆ど話しかけもしなかった。
しかし、彼女は今までと同じように
僕に話し掛けてくる。

僕がやめようとしてるのわかるだろうに。
何故、そういう態度をとる・・・?

二週間後、職場の男性バイト陣に
「マーチンをひろめる会」が決行された。
この時、まだ入社3ヶ月目だったからだ。

飲んで歌って、最後に残ったのが
同僚Mさん、バイトのF君と、彼女と僕。
最終電車ギリギリの時間だ。

僕以外はみんな同じ西武池袋線。
じゃ、と言って別れようとしたその時。

「私、マーチンに送ってもらお!」
と言って、彼女が腕を組んできた。
「余計な事言っちゃ駄目よ!」
と二人に釘を刺しながら・・・。

バレバレの僕達ではあったが
これだけハッキリ目の前で見たからか
二人は豆鉄砲を食らったハトになっていた。

「ぽっぽー」
いや、違う。
「は、はい」

「行こっ♪」
「・・・」

変わりすぎだよ、女心。
きっと彼女なりに悩んだのだろうが・・・。

「押せば引き、引けば押される」

これを学んだのも彼女からだった。

そしてもう一つ学んだこと。
わかってはいたが、それでも痛感したこと。

「タイミング」

この時、僕は全く期待していなかった。
だから、彼女が家にやってきたけれど
全く迫りはしなかった。
そういう気分でもなかった。

そんな僕を見て彼女が言う。
「私、今日アノ日なんだ・・・
 でなきゃ、我慢できないよ」

そしてこう続いた。
「あなたが好きなの・・・。大好き!」

どう返事をしたか、覚えていない。
ただ、ベッドの中で抱きしめたことだけは確かだった。

この夜・・・
僕が本気で迫るか、彼女がアノ日でなければ
二人の関係は変わっていたことだろう。
タイミングが悪かった。
結ばれるべき二人ではなかった・・・
ということかもしれない。

この日以降、少しだけ関係が復活するが
やはり同じ事を繰り返す。

「変わりやすいのは、女心と秋の空」

9月下旬。
夏が終わり、秋になったその頃に・・・
僕と彼女の恋も終わりを告げる。

P.S.想い出のちっさな港公園。
  今は「つばさ公園」という名前になり
  立派な公園になったんだよ。

Form Martin


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