第42話 東京ラブストーリー 〜前編〜

「マーチンさんも来ますか?」
この一言が始まりだった。

田舎を再び飛び出し東京で就職。
職場は男女比1:20という
嬉しいのか恐ろしいのか
わからない所だった。

誘ってくれたTさんは職場の先輩。
なんと7つ上。
しかし、とてもそうは見えない
可愛い人だ。

出来たばかりの
恵比寿ガーデンプレイスで
飲み会があるという。
僕が入社して数日後のことだった。

高層ビルの最上階なので
夜景が綺麗に見える。
「やっぱり東京はいいなあ・・・」
ひたる僕であった。

「・・・わかったか?」
「は?」
「は?じゃないだろー。全く」
「すっ、すみません」

いきなり絡んできたのは営業のN。
苦手なタイプだ。
まったく入社数日の人間に絡むなよ・・・。

「気にしなくていいからねっ」
「あっ、はい」
彼女のフォロー。
いいとこあるじゃん。

適当に愛想まいて
ちょっと馬鹿話をして終わった
初めての飲みだった。

それからというもの、
毎日誰かから飲みの誘いを受け
「ありがたいことだ!」と
毎日飲んでいた。
どうも爆発パワーの性格が
ウケる人にはウケるようなのだ。

そんなある日のこと。
そう、雨が降る夜だった。

彼女と飲んだ後、ふらりと公園に行った。
彼女の傘に一緒に入って話していた。
彼女は
「どうしたらいいのか、わからない」と
突然僕に話し始めた。

札幌で働いていた彼女には彼がいた。
彼は転勤で東京へ。
その半年後、彼女にも東京転勤の機会が訪れる。
迷わず生まれ育った地を離れる彼女。
しかしそう長い時はかからずに
別れてしまうことになる。
それでスッパリ別れれば良かったものの
友達としては会うという、グレーな状態。
新しい彼がいるにはいるが
忘れられない。。。という状態だ。
これがもう数年続いているらしい。

何故それを僕に話す?
出会ってまだ10日程だというのに。
そう思う反面、
その答えがわからないでもなかった。

翌日、上司のIさんに呼ばれた。
この人とはとても仲がいい。
「昨日Tと話しただろ?」
「?はい(何故知っている?)」
「マーチンに何故か話してしまったって。
 他の人に話されたらどうしよう〜って
 心配していたぞ」
「・・・(言うわけないだろ)」
「言うわけないだろって言っといたからさ」
「あはははは、ありがとうございます」

この日から妙に二人は接近した仲になる。
僕は彼女のチームに配属となり
研修もお世話になることになった。

昼ご飯も晩ご飯も一緒。
誰が何処から見ても
異様に仲がいい二人だった。
でも、だからといって
何があるわけでもなかった。

そんな中・・・
昼ご飯中にポロリと一言。

「・・・遊びに行きたーい」
「じゃ、一緒に行く?」
「いいよ♪」←サクッと即答
「え!?マジで?」
「うん、行こう」
本当かよ・・・!
よ〜し、即実行だ!

「じゃ、今週いい?」
「うん。いいよ」
決ってぇぇーーい!


じゃ、一緒に行く?


この一言が
友達以上恋人未満への
入り口となった。

日曜日。
得意の横浜デートに繰り出した。
彼女は車でのデート経験があまりなく
いつになくはしゃいでいた。

「えぇー、新宿と渋谷ってこんなに近いの?」
そーなんです。車が動けば即到着します。
「うわ!ここ仕事で来たよ」
などなど・・・

二子玉川から第三京浜で横浜へ。
10分で到着だ。
「うぅっそ〜!電車だと1時間じゃない!」
「はっはっは。まいったか」
「あなたが威張ることじゃないでしょ!」
「・・・はい(+_+)」

首都低速道路が大威張りの関東でも
この第三京浜だけはまず渋滞しない。
スーパー使える高速だ。
当時200円也。

大好きなベイブリッジへ行って
その下を散歩する「スカイウォーカー」へ。
強烈に風邪が吹くので夏でも寒い。
スカートは大歓迎・・・
いや、やめた方がいいと思う。

夕方になると
ぽつぽつと光りだす横浜の街が
綺麗に見える。

「ねぇねぇ、あれなんだろう?」
「船じゃない?」
港に泊めてある氷川丸だ。
「なんであんなに光ってるの?」
「・・・行ってみようか!」
「うん!」

ぐるぐる回るインターチェンジを抜けて
山下公園へ。

「あれあれ!」
「ビヤガーデンじゃないか」
「行こ行こ!」
「ああ、いいよ」

船上ビヤガーデンというやつで
なかなかいい感じだ。
外人さんもいて
ちょっとしたディナークルーズみたい。

「あ、ねぇ後ろ!」
・・・ドーン☆
「花火だ・・・」
「なんだろう?」
「コンサートか何かやってるんじゃないか?
 デート記念にさ!」
「あはははは、やっぱりデート?」
「でしょう?」
「でもねー・・・」
「どうしたの?」
「今日私シンデレラなんだ」
「?」
「12時くらいには彼の家に行かないと・・・」

何だよ、それ!
帰るのは仕方ないかもしれないけれど
そんな事をいちいち言うなよ!

「それってさぁ・・・」
「え・・・?」
「マナー違反だぜ!?」
「・・・」
「彼の事はわかってる。
 でも俺と逢うなら
 今日は俺の為に時間を空けてくれよ」
「・・・ごめんなさい」
「全く・・・」
「ごめん・・・」

萎えきった気分で
ご指定の駅へ送るマーチン君。
いつに無く元気が無い。
長い沈黙を
あっという間に通り越し
JR南武線/溝の口駅到着。

「・・・ありがとう」
「・・・うん、おやすみ」
「ごめんね、もうしないから」

バタン
ドアを閉めて彼女が駅へ向かう。

もうしないから。

そっか、、、
また次があるんだね。
・・・もうしないでね。

車を走らせ家に向かう途中。
見渡してふと蘇る記憶。
そう。ここは、、、
大学時代に同棲生活を送った場所だ。

あれから3年。
辺りの雰囲気は当時の面影を残しながらも
確実に変わっていました。
仲良く歩くカップルには
懐かしい僕達の姿が見えました・・・。

To Be Continued...


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