第19話 気になるあの子のアプローチ 〜後編〜

「いらっしゃいませ〜!」
「ホントに来たな。。。」
当たり前だ。
えぇと、BさんBさんBさん・・・
いないじゃん!
「Bさんは?」
「はぁ!?」

カラオケで店内が喧(やかま)しい。

「Bさんはぁ!」
「トイレ!!」
ンな事でかい声で言うなよ。。。全く。
自己中な僕。

今日はカウンターに座る。
口説く時はカウンターに限る。
「水割りでいいか?」
「あぁ」
出された水割りをがぁっと飲む。
うまい。
いつも思う。
なぜ店の水割りは美味しくて
家で飲むとまずいのだろう。
ミネラルを買ってきてもまずい。
腕が悪いのか?

「こにちはー!」
「こんにちは」
ニコニコしながら彼女が隣に座る。
僕の左側を勧めた。
話す時はこのポジションでなきゃ嫌なんだ。
歩く時は反対。
ベッドの中は。。。秘密だね。

「きのは(昨日は)ありがとー」
「うん」
所々英語を混ぜながら
何故日本に来たの?
涙のキッスが何故好きなの?
そんな話をしていた。

「あなた、すごく、きょみある」
「え?なんで?」
「なんで???」
あ、また通じていない。

「どうして?、Why?」
返事が無い。
というより、言おうか言わまいかって感じ。
「Tell me,please」
これぐらいなら即喋れる。

彼女は21歳。
19歳の時に結婚を約束した彼が他界したと。
交通事故で。
その彼に僕が凄く似ていると。
嘘を言っているようには見えなかった。

外人顔のせいか
世界中にそっくりさんがいるようだ。
イタリアに一人、中学の先輩が見つけた。
アメリカに一人、父親が見つけた。
北海道に一人、中学の時クラスのみんなが見つけた。
しかも授業中に。
社会の教科書に載っている”工場で働く人”。
みんなで集まって宴会でもしたら
さぞかし人は驚くだろうと
想像するだけで笑えるが、実現すまい。

この時既に
「前の恋人に似ている」発言は
「あなた好きよ」と同意だと認識していた。
恋愛は万国共通だ。

「僕は死なないよ」
「うん、うん。。。」
と言いながら涙を見せた。
「元気を出して。
 後で気晴らしにドライブしよう」
。。。

K君に軽く事情を話す。
少し休憩して
落ち着いた彼女は仕事に戻った。
僕は車で彼女を待つ。

午前1時を過ぎて店の灯が消えた。
僕は彼女を車に乗せた。
行き先は決まっている。
お気に入りコース
横浜だ。

ベイブリッジを抜け山下公園へ。
何を語るでもなく
深夜の公園を歩く。
向こうに見えるベイブリッジと
時折響く船の”ボォーーッ”という汽笛が心地良い。

ふと右側の彼女を見ると
僕を見つめていた。
見つめ返すが目をそらさない。
そのままキスをして抱きしめた。
ひたすら抱きしめて
お互い気持ちを確認した。
言葉はあまりに無力だった。

数時間後
僕たちはベッドの中にいた。
僕は実感した。
やはりSEXは男女間における
人類最大かつ共通のコミュニケーションだ。
知りたくない事も分かってしまう。
彼女は僕を通して
既にいる筈の無い彼を見ているようだった。
僕にとっては辛い事だ。
ということは
そう、彼女もまた辛い筈なのだ。

彼女を支えていく勇気の無い僕は
忽然と彼女の前から姿を消す。
勝手だ。
まだまだ青かった。

夢を見たような恋でした。
君は今、何処で、何をしていますか。。。

Form Martin


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