第12話 独り暮らしとWの策略

平成元年春。
僕は一つだけ受けた大学になぜか合格。
大学は東京の渋谷にあったので
上京しての東京生活がスタートする。

東京で浪人していた彼女も合格。
たまたまその子の大学も渋谷。
しかし、もうその時には
僕の気持ちは離れていた。。。

何度か別れ話を切り出すが
わかってくれず
ずるずると時間だけが過ぎる。
そんな日々が続く。

大学で仲良くなったW君に
彼女の話をする。
どうすれば別れられるか?
彼がある案を出してくれた。
人数集めて旅行しないかと。
彼女を気に入る友人が出れば
その人に任せることが出来るのではと。

他力本願だが何もしないよりはいい。
軽井沢へ行くことになった。
4vs4。
旅行中W君の友人X君が
本当に彼女を気に入って口説き始めた。
彼女は彼女で
僕のことを忘れなければと思い
彼を受け入れようとしていたらしい。
かなりいい線までいったが
結局やっぱりまだダメと
X君は玉砕した。

東京に戻ってきてW君が言う。
「お前、もう引越しするしかないよ」
昼夜を問わず家に来て
呼び鈴をガンガン鳴らされた事もあり
「呼び鈴・電話恐怖症」になっていた。
彼女の行動は
今で言う「ストーカー行為」だった。

そうだな。。。引っ越すしかないか。
こうして上京してたった3ヶ月後
引越しをした。

新しい家になり
今度は呼び鈴も電話も安心して出られる。
それだけでも気が楽だ。

「ピンポーン」
「はい」

「。。。こんにちは」
!!
何でお前がいるんだ?
。。。

ドアを開けた以上
門前払いをするわけにもいかない。
部屋で話をする。
僕達の話より
何故ここを知っているのかが気になる。

「どうしてここが。。。?」
「え?マーチンが引越しするって
 W君が教えてくれたのよ。
 住所も電話番号も」

なぁにィィィィィ!!!

僕から相談を受けていたことを
逐一電話で報告していたらしい。
しかも
「俺が引越しを勧めたんだ」
とまで言っていたようだ。

久々に思い出した
この感覚。
いくつになっても
何処へいっても
同じ奴がいるもんだ。
この人種に問いたい。
こんなことをして何が楽しいんだ!?

これきりWとは縁を切る。
「嫌いな人は完全に切り捨てる」
ようになったのはこの時代からだろう。
クラスで僕だけが彼を嫌うことになり
友人から「どうしたの」と聞かれるが
いちいち説明する話でもない。
「いろいろあったのさ」と。

2年後、彼の悪事は
多くのクラスメートに及んでいた。
それがある日
学食での雑談中一気に発覚。
彼は孤立した。

君に出会って確信した。
生まれもっての悪人はこの世に存在する。
「性根が悪」なのだ。
目を覚ますことは出来ないのか?


Form Martin


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