第1話 初めて贈ったラブレター

「これありがとね」
えっ!?
えぇェェェッ!

机の引出しに入っているそれは、それは、それは。。。
僕が書いたラブレターじゃないか!

顔から火が出る。
穴があったら入りたい。
馬の耳に念仏。
それは今関係ない!

中学1年の二学期のある日、席替えがあった。
Jちゃんの隣になりますように!と祈った。
プラス思考の塊、マーチンが祈る!!
そしたらなったんだ。本当に。
しかも一番後ろの角席。

彼女は文化クラブが僕と同じなんだ。
管弦楽部(ミニオーケストラ)で僕がトランペット。
彼女がユーフォニューム。
金管楽器同士なんだ。
彼女は明るくて話してて凄く楽しい。
一緒に話したり練習したりするうちに
僕が好きになっちゃった。

どうしよう?
そうだ、ラブレターを書こう!
もうすぐ僕の誕生日だから
その日に届くようにすればかっこいいじゃん!

13歳のくせにロマンチストなマーチン。
後先考えてなかったな。
1983年12月12日。
僕の13回目の誕生日。
確か月曜日だった。

。。。
やっぱり。

内容はごく普通。
「好きです。付き合って下さい」
もちろんそれだけじゃないけどね。
なになに?
返事が気になる?

「これありがとね」
えっ!?
えぇェェェッ!
「こんな、初めてもらったし、よくわからないの。
 だから、暫くは今まで通り仲良くしましょ」
「う、うん」

クラス朝礼前の20秒の出来事。
この日から僕たちは
手紙のやり取りや電話をする仲になる。

ほとんど毎日手紙を書いた。
彼女も書いてくれた。
それが凄く嬉しかった。
二人の世界ができたから。

「はい」という返事はもらえなかった。
でも君の「ありがとね」が、
僕はとても嬉しかったんだよ。


Form Martin


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