毎日生まれ変わりながら (2004年2月29日 第134号)

親愛なる君へ

驚いた。
20年前よりさ・・・ずっとキレイになってるんだから。

お正月にね、田舎へ帰ったんだ。
そう、お家の神社を手伝いにね。

・・・今更言うなって?
ごめんごめん、出すのを忘れてたんだ。

久しぶりに会った、父さんと母さんは元気そうだった。
兄さんたちも元気そうだった。
ネコたちも・・・もっくん、ミーニャ、

・・・あれ?
シロがいない。

「父さん、シロは?」

・・・。

・・・そっか。

シロはね、僕が中学2年生のときに生まれたんだ。
子供だった僕は、よくシロをいじめていた。
だから、シロは僕の顔をみるといつも逃げていた。

大学生になって、1年に1、2回しか家に戻らなくなった。
でも、シロは僕のことを覚えていて、
僕の顔をみると「うにゃーん」っていってくれてた。

社会人になっても、シロは「うにゃーん」っていってくれた。
でも、シロの顔は・・・だんだん、おばあちゃんになっていった。

・・・。

・・・そっか。
シロ、死んじゃったんだ。

その夜ずっと眠れなくて・・・
明け方、海まで散歩してみた。

・・・。

えっ!?

驚いた。
20年前よりさ・・・ずっとキレイになってるんだから。

満潮なのに、海の底が見えて、
そこにイシダイがいたんだ。

イシダイって、エンゼルフィッシュみたいな形をした
シマシマ模様の魚なんだけどね。
すごいキレイな水の海じゃないといないんだよ。

・・・。

20年前。
まだ、シロは生まれていなかった。
そして、この海は・・・ヘドロの海だったんだ。

逝ってしまうものがいる。
生まれ変わるものもいる。
・・・ふくざつな気持ちだよね。

僕たちも・・・いずれ逝く。
だけど、それまでの間はね、
この海のように、毎日生まれ変わりながら・・・
生きていきたいって思ったんだ。

P.S.お父さん、お母さん。長生きしてくださいね。
                                From Martin


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