一緒にくねくねした君と僕 (2000年11月24日 第68号)

親愛なる君へ

「あの時、こうしていたら
 今、どうなっていたかなぁ・・・」

そんなことを・・・
ふと思う時ってあるんだよね。

僕は小学二年の家族旅行で、四国へ行った。
父が新車を買い、カーフェリーで行ったんだ。

実家が海のすぐ近くでね。
それこそ走ったら
30秒で海へダイビングできるところ。
だから船にのる機会も多かった。

船ってね、
甲板から後ろを見ると・・・
白くて長い軌跡が見えるんだよ。

まっすぐ進んでいるようなんだけど
実はそうじゃない。
結構くねくね走っているものなんだ。

あっちへ行ったり、こっちへ行ったり。

そう・・・、人生のようにね。

その時、その瞬間では
頑張って前に前に進んでいる・・・
つもりなんだけど。

後から振り返ると
「何やってたんだろ?」
・・・そんなこともあるよね。

僕は君が悩んでいたら、必ずこう言う。
「前を向いて歩こう。
 後ろを振り返っちゃいけない」

渦に巻き込まれたら
「脱出だ!!」という瞬間からしばらくは・・・
振り返っちゃいけない。

いけないんだ。

でもね、渦から遠く遠く離れたら・・・
いつしか振り返って見て欲しい。

するとね、こう思うことがある。

「ずっと昔に出くわしたあの大渦。
 あっちに進んでいたら、
 一体どうなってたんだろう・・・」
ってさ。

できることなら、その渦に
もう一度巻き込まれてみたいと思う。
そして今度は反対側へ・・・

でもそれはできないんだ。

そこへ行ってみても、
今は・・・もう穏やかな海なんだよね。

「あの時、あなたといたら
 今はどうなっていたかなぁ・・・」

わからないよ。
わからないけど
そう言ってくれる人がいることは
とても幸せなことだろうね。

今という瞬間(とき)を生きる
自分を後悔しているわけじゃない。

でも、たまには後ろを振り返って
人生の軌跡を眺めて見るのも
悪いものじゃないよね。

それでいいじゃない。
いろいろあったから今があるんだ。

フェリーだって、くねくね曲がって走ってたよ。

君のくねくねは君の人生。
僕のくねくねは僕の人生。

でもね、覚えておいて。

ほんの短い間でも、一緒にくねくねした君と僕。
その部分だけは・・・
同じ軌跡を持っているんだよ。

P.S.いつかフェリーに乗って、一緒に四国へ行きましょう。
    二人っきりで・・・なんていいませんから。
                                From Martin


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