言葉という諸刃の剣 (2000年7月3日 第25号)

親愛なる君へ

「あんたは人の心を傷つけることを言う。
 これから必ず苦労するよ」
僕は、こんなことを両親に言われていた。

我が家は仲が良く
家族マージャンをすることが多かったんだ。
もちろん、ゲームとしてだよ。
友達ともよく遊んだ。

でも、ゲームとはいえ勝負事なので
感情がもろに出るんだ。

負けてしまうと「くそっ!」。
勝つと「へへへー、ざまぁみろ」と言う人。

かと思えば、
負けて「そっかー、すごいね」。
勝って「ごめん」と言う人。

マージャンに限らず、こんな場面はあると思う。
きっと、子供の頃の僕は・・・
「ざまぁみろ」って言っていたに違いない。

何気ない一言が、
どんなに重いか感じることができたのは
大学生になってからだった。

アルバイト先の店長さんが
仕事あがりに、こんなことを言ってくれた。

「お前、ちゃんと飯食ってんのか?」

上京して数ヶ月。
まともなご飯など、ほとんど食べたことがなかった。
胸にじんとくる一言だった。

仲良しグループでレストランへ行った。
みんなで食べ始める。
ある人が言った。

「げー、まずー。この店最低ー!」

僕のは普通においしかった。
でも、一気にまずい飯に早代わりした。

何気ない一言が・・・
人の気持ちに、大きな一石を投じることがあるんだよ。

「週末ディズニーランドへ行こうよ!」

週末は仕事で行けない。
そんな時に
「だめだ、仕事だ」と言われれば、切なくなってしまう。
でも、
「ありがとう。でもごめんね、仕事なんだ。来月にしよう」
と言われれば、暖かい気持ちになれる。

相手の心を傷つける言葉を使ってはいけない。

言葉は、人の心をあたたかく包み込むことができる。
しかし、深く切り刻むこともできてしまうんだ。

刃物は体を切るが、言葉は心を切る。

だからね、君には心を切られる痛みが、
心を包まれるあたたかさが、わかる人になって欲しい。
そう思うんだ。

P.S.やっぱり苦労しました。
                                From Martin


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