空を飛んできたよ (2000年6月7日 第10号)

親愛なる君へ

「Oh!!!××××!!××××!!」
先生が叫んでいる。
一人空から降りてきた。

パキッ

お箸を折るような乾いた音がした。
その人は右足を骨折した。
辺りが騒然とする。
僕がトライする10分前の出来事だった。


今回の旅行で僕は
「普段体験できない事をしたい」と思っていた。
スキューバダイビングは経験がある。
・・・
スカイダイビングはどうだろう?
体験スカイダイビングは
先生が背中にくっついて二人で飛ぶ。
パラシュートの操作は、全て先生がやるから安心だ。
よし、これに決めた!

6:50集合。
早過ぎる。
ホテルから1時間ほどのダイビング場へ向かう。

到着後、まずビデオ講習を受ける。
「・・・私はこれから あんた達 が使う
 二人用パラシュートを開発した○○です」
一同爆笑。
凄い日本語訳だ。

その後、誓約書にサインをする。
「万が一死んでも訴えません」という内容だ。
訴えないけど呪ってやる!と思いながらサイン。
そして親切な指導を受ける。

「センセイ、肩、ポンポン。
 君、えびぞーりー。OK?」
「・・・」
「ランディングー。足、前ー。
 センセイStandup。君、Standup。OK?」
「Yeah・・・」

説明はほとんどジェスチャー。
アメリカって国は凄いなぁと思った。
これで3000mから落ちるんだよ。
覚悟を決めて待つ。

僕の名前が呼ばれる。
先生に体を固定するベルトを付けてもらう。
ちょっと待って。
「レンタルウェアー?」
ウェアを貸してもらえると聞いていたので、
僕は短パンにTシャツなんだ。
いくらなんでもこの格好で・・・
「ダイジョーブ、ダイジョーブ!!」
・・・

やっぱり、アメリカって国は・・・
え?!
3000mっていうと
地上の気温が30℃としても約0℃なんだよ!
「Realy?!」(本当ですか?!)
「ダイジョブー!!!」
「・・・」

セスナ機に乗る10分前。
あの事故が起きた。
僕は僅か20mの所から目撃した。
その人はダイビングの資格を取る練習をしていた
生徒さんのようだった。

地上の風具合が良くなかったのだ。
人間って簡単に壊れちゃうんだね・・・。
一気にやる気をなくす。
やめようか悩んでる間に出番が来てしまった。

セスナ機で上空へ。
ジャンボ機と違い
機体が小さく軽いので今にも落ちそう。
時々気流の影響で機体が「ストン」と真っ直ぐに落ちるんだ。
お茶目なパイロットさんがワザとやることもある。

「うわーっ!!!」

ジェットコースターの100倍恐い。
約20分後、3000mに到着。

バーン!!

ドアが勢い良く開けられる。
機内がすごい風にさらされる。
やっぱり寒い!
ステップに足を下ろす。
完全に自殺行為じゃないか!

「GO!」

!!!!
飛べない。
「GOー!!」
背中の先生が押し出してくれた。

!!!

目を開ける。
「・・・!!」
「すごい、なんだこれは!?」
眼下にハワイの海岸線、左横に山、前に雲がある。
落ちているという感覚はない。
浮いているという感覚だ。

感動だ!

素晴らしい、こんなの初めてだ!

先生にこの感動を伝えたくていろいろ叫ぶ。
「アッハッハー!」と肩をたたいてくれる。
嬉しい。
背中の先生も嬉しそう。

感動を共にできるのは本当に嬉しいんだよ。

30秒のフリーフォール後、パラシュートが開く。
緩やかに落ち始めた。
今度は落ちている感覚の中、景色を眺める。

これもまたいい。

地上が近づいてくる。
ふと・・・
さっきの事故を思い出してしまった。
ちょうどその時、
フォローの人達が着地点にかけよって来てくれた。
先生もこれまでになく丁寧になった。

「あ、これなら僕は絶対死なない」
そう思えてみんなに感謝した。

着地。

感動で手足が震えている。
大興奮のままみんなに話しかける。
未知の体験だった。

僕はフリーフォールの30秒間が一番良かったな。
TVでスカイダイビングのシーンを見たことがあるでしょ?
でもあれ見てもあまり感動しないよね。
やってみて分かったけど、
TVでは本物の10%の感動も伝わっていない。
この手紙を読んでくれている君にも
そのぐらいしか伝わらないかもしれない。

例えが変だけど、
SEXをした事がない人に
その良さを口では説明できないじゃない?
それと同じだと思う。
何事もやってみるしかないんだろうね。

僕はこの体験で
「未知の感動リスト」が一つ増えた。
このリストを増やす事って、
人生の目的の一つだと思う。

機会があったら君も絶対にやって欲しいな。
ココロの悪魔もぶっ飛ぶよ!

P.S.恐かったら僕と一緒に飛びに行こうか?
    「死んでも呪わない」ってサインしてよ。
                                From Martin


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